生命


14時40分
測量道具を取りに休憩所に戻る。
協力会社の職長がすれ違い様に
『大工さんが倒れたみたいだわ』
と。
周囲を見渡すと人だかりがあり駆け付ける。
倒れ動かない大工さんをただ呆然と見つめる10数名。
頭が混乱する。
状況を聞いても誰もはっきり答えない。
はっ
と駆け寄り脈をはかる。
脈がない。
『マッサージ!!!』
と叫ぶと同時に職員のH氏が心臓マッサージを開始。意識なし。呼吸もしていない、
急いで走り、各所の事務所にいきAEDを求める。
みつからない。
再度駆け付ける。
H氏には疲労の色がみえ、マッサージに力がない。
僕はとっさに大工にまたがり胸を力一杯押し続けた。経験なし。
肋骨がメリメリ言う音と感触が何度もおそう。
帰ってこない。
頭にはなぜか、あの秋葉原の事件が浮かんでいた。
何度と何度と押す。押す。
救急車が到着する。
AEDが使用される。
戻らない。
担架に乗せ、大工さんは運ばれた。
遅かった…
ただそう感じた。
まわりには呆然と立ち尽くす人と、同じだけニヤニヤ笑い話す若者たち。
僕の殺意は『心臓動いたそうです!』
の一報で押さえ込まれた。