働くおっちゃん劇場


会社の立体駐車場は2人のおっちゃんが日替わりで管理している。
これまで2年。ほぼ毎日交互に顔を合わせているわけだが
一回だけ2人が同時に出勤していた時はなんか笑えた。
でも実はこの2人はあまり仲は良くないようだ。(たぶんね)
今春から2人の担当曜日が変わったのだが
(月水金担当と火木土担当が入れ替わった)
その際におっちゃんに
『あれ?曜日変わったんですか?』
て聞いたら
【そうさぁ〜、土曜日は働きたくないって言い出してね〜
まったく年寄りは我儘でね…】
と、言っていたが二人の年の差はわからない。
2人とも70前ぐらいだ。


朝。車を出すため駐車場に行ったらそのおっちゃんが
ジュースケースに腰を降ろして爪を切っていた。
爪をパチパチ四方に飛ばしつつ。
『おはようございやす』と、僕。
『あ、(車)出すかい?』
と、ちらっと僕を見て言いまた爪を切り出す。
『あ、はい』
と僕。
車を出す以外に此所に来た事はない。
『お〜し、ちょっと待ってね〜』
と、おっちゃん。


それからしばしおっちゃんは手を休める事なく
残りの3本の指の爪を切り丁寧にやすりまでかける。
無言の僕。
指に【ふぅぅぅっ!】と息を掛けおっちゃんは
上目使いで僕を見た。
デートに出かける間際、彼が待っているにも係わらず
マニキュアを塗り、満足げに眺めたあと彼に
『うふふっ。お待たせ』
とでもいうようななんとも云えない表情で。
そしておっちゃんはこう言った。
『車、出すのかい?』