妄想美学


昨夜26時コンビニに行き、アル中の禁断症状による
幻覚・幻聴と震え(そりゃもう生まれたての仔馬並)を
抑えるべく、サッポロソフトとクランツ(これは死に際の
老犬のソレのように餌皿に入れて食べる)を買う。
車に乗り込むやいなや、禁断症状の抑制には勝てず
サッポロソフトの口をリポビタンDを開けるかのように
親指でこう、シュッ!と開けそのまま口に注ぐ。
(このあと飛んだキャップを拾う行為は独りでも恥ずかしい)
胃に染み込んだ酒が潰瘍を刺激する。
痛みはやがてある種の快感に変わりさらにサッポロソフトを注ぐ。
アレよりも悦な瞬間であろう感覚の中、コンビニに入る
女性と目が会う。
僕はその悦が彼女を見たからだという錯覚に陥り
サッポロソフトを投げ捨てはせずしっかり栓をし、
カップホルダーに置き、誘われるようにコンビニに入る。
店に入ると彼女は
『こっちだよ』
と言わんばかりの視線を僕に送り什器を笑顔で曲がる。
『あぁ君だったんだ』
彼女はいつもこうして僕の前に現れ消える。
再び彼女が呼ぶ
『この中に・・ 』
彼女はプライベートルームに入る。
『また、消えるんだろ・・』
そう言いながら僕は早足でそこに向かう。
今日は捕まえると誓いつつ
サッポロソフトの効果か、少しフラつく。
水の流れる音と共に彼女が出てくる。
その時彼女は僕の前に何時もと違う様子で現れた。
その様は小さな天使と手を繋いだ堕天使であった。
美しい美貌は危うさすら感じさせる。
彼女は美しさの裏にある冷たい表情で天使に囁く。
『いい?この男は韮なのよ。』
僕は衝撃のあまり座り込み、あるはずのない
サッポロソフトを探す。
天使が囁く
『ほんとだぁ昨日のごはんの臭いがするね』
天使が吐く毒を僕は初めて味わう。
いちごの感覚だった。悪くはない。
堕天使はその美しい顔を少し傾け笑顔で僕に何か呟いた。
『・・・・・』
サッポロソフトの残り香といちごの薫りに包まれた僕には
その言葉は届かなかった。
再び切れ出したアルコールを、店の棚から捕ったコップ酒で
補充しレジに進みポケットから180円払う。
店員が僕のポケットからなかなか出ない小銭にイライラ
しながらこう言った。
『じゅんって。じゅんって言ってましたよ』
僕は小銭を出す手を止め聞いた
『だ、な、何?誰が?』
その瞬間店員は自動販売機のようにただ僕を照らしていた。
僕の足元をそっと。


なんて妄想をコンビニの帰りにしてましてん。